海外展開を考えたときに現地法人を置くメリット・デメリット
海外で事業を行う際、現地法人を設立するかどうかは重要な判断ポイントです。
ただ輸出するだけのビジネスとは違い、現地とのつながりや責任が大きく変わります。
今回は、現地法人を設立するメリットとデメリットを中心に、基本的なポイントを紹介します。
現地法人とは
現地法人とは、日本の企業が、海外で現地の法律に基づいて設立した法人(子会社)です。
現地の企業としてその国に登録され、法的には日本の親会社とは別の法人格として扱われます。
日本企業の海外進出には、「現地法人」のほかに「支店」や「駐在員事務所」という方法もあります。
海外進出の種類 |
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現地法人 | 現地の法制度に基づいて設立された独立した法人。営業活動・契約・雇用などが自由に行え、現地企業と同様の扱いを受ける。また、現地の税制や法規制の対象となる |
支店 | 日本の本社が直接管轄する海外拠点で、法人格は日本に属する。現地での営業活動や契約は可能だが、税務・法務上の責任は本社が負う。現地法人よりも設立や撤退の手続きが簡単 |
駐在員事務所 | 主に市場調査や情報収集などの非営業活動を目的とした拠点。現地での営業行為や契約行為は原則として認められていない。設立手続きが比較的簡易で、初期段階の活動に向いている |
上記の違いを前提として、現地法人を置くメリット・デメリットを考えます。
現地法人を設立する主なメリット
現地法人を設立する主なメリットは、以下の3点です。
- 現地市場への信頼度が高まる
- 現地法人名義で営業活動・契約ができる
- 人材採用や店舗展開がしやすくなる
支店や駐在員事務所とは異なり、別の法人として設立されることから、多くのメリットがあります。
それぞれ確認していきましょう。
現地市場への信頼度が高まる
現地法人は、現地の法律に基づいて正式に設立された法人であるため、取引先や行政機関、金融機関から「現地企業」として認識されます。単なる支店や駐在員事務所に比べて信頼性が高く、現地でのビジネスチャンスを広げやすくなります。
特に公共事業への入札や現地企業との長期的な契約などは、現地法人の存在が前提になるケースもあります。消費者にとっても「現地法人を持つ企業」という点は安心材料となり、結果としてブランド力の強化にもつながります。
現地法人名義で営業活動・契約ができる
独立した法人格として認められるため、企業活動のすべてを自社名義で行えるのも現地法人のメリットです。販売契約やリース契約、不動産の賃貸契約、人材の雇用契約などあらゆる商取引が現地法人の名義で締結できます。
支店や駐在員事務所では契約の主体が日本本社となるため、現地の法律との整合性や手続に制限が出るケースも珍しくありません。一方で現地法人であれば、現地でのビジネスがより効率的に進められ、交渉や取引の場でも有利に働く可能性があります。
人材採用や店舗展開がしやすくなる
現地法人であれば、その国の企業として労働契約や雇用に関する手続きを行えるため、現地の人材を正規に雇用しやすくなります。労働許可の取得や社会保険への加入、福利厚生の整備なども、現地法人を通じて適切な対応が可能です。
また、法人格があれば、不動産契約や店舗登記もスムーズに進みます。小売業やサービス業を中心に、現地での拠点拡大を柔軟に進められるかもしれません。採用活動や店舗開設では、現地法人が信頼の証として機能する場面も多くあります。
現地法人を設立する主なデメリット
一方で、現地法人の設立・運営には多くの手間やリスクが伴うのも事実です。
現地法人を設立する際に考慮すべき主なデメリットは、以下の3つになります。
- 設立や維持に時間と費用がかかる
- 現地法や税制に精通する必要がある
- 人材管理や労務トラブルなどのリスクがある
それぞれ解説します。
設立・維持にコストがかかる
現地法人の設立には、各国の登記制度に沿った手続きが必要となり、一定の時間とコストがかかります。登記申請や資本金の払い込み、現地オフィスの確保、銀行口座の開設、会計士や弁護士の契約などをしなければなりません。
設立後も、税務申告や監査対応、法務チェック、定期的な報告義務などが発生するため、維持管理にも継続的なコストが必要です。言語や制度の違う国でこれらを進めるには、現地の専門家のサポートが不可欠です。
現地法や税制に精通する必要がある
現地法人を運営する以上、その国の商法や税法、労働法などを遵守する必要があります。適正な労働契約を締結しつつ、法令に則ったリソース管理を行い、現地の税制に沿って納税をしなければなりません。
制度が頻繁に変更される国では、対応が遅れることで罰金や営業停止などのリスクも生じる可能性があります。現地の法律に精通した法務担当者や外部の専門家を確保し、法令遵守の体制を整えるのが不可欠です。
人材管理や労務トラブルなどのリスクがある
現地法人では、現地の従業員を雇用しますが、人材管理や労務上のトラブルが発生するリスクも増えます。
労働に対する価値観は国によって大きく異なります。文化の違いや労働慣習の違いによって、職場環境の調整が難航するケースも想定しなければなりません。社内ルールや労務管理体制を、現地の実情に合わせて構築することが重要です。
当事務所に相談するメリット
国際法務は、言語やそれぞれ営業活動を行う国によって注意すべき点などが異なります。当事務所の代表弁護士は、英国での経験を15年以上有しております。また、当事務所は、長年の信頼と実績のもと、多くの海外出身のクライアントへ様々な法的サービスを提供しています。
現地法人の設立などを検討したときに当事務所へ相談する最大のメリットとしては、豊富な海外経験とネットワークを生かして、様々な方面から海外展開のサポートを提供することができる点にあります。
現地法人を設立する場合、現地の会社法を確認し、その方法に則って手続きをしなければなりません。海外進出先の法的知識はもちろんのこと、英語や海外文化を十分に理解している必要があります。現地の企業を買収し、現地法人を置く場合には、契約書の作成やレビュー、契約交渉なども英語で行わなければならないケースがほとんどです。
当事務所にご相談、ご依頼いただいた場合、海外経験が豊富でかつ英語に精通した弁護士が専門家チームを作り、様々な案件に対応することができます。
また、当事務所はカンボジア、アメリカ、イタリア、英国やカメルーンなど世界各国の弁護士や専門家とパートナーシップを提携しているため、どのような案件にもフレキシブルに対応することが可能です。ぜひ、当事務所に一度ご相談ください。